心内膜炎と歯周病

歯周病は怖い

 歯周病は、体の内部の歯を支えている骨が腐ってしまう 感染症です。手や足の体の内部の骨が日常生活で腐ってしまうことは、まずありえません。しかし、口の中では起きてしまうのです。おことわりしておきますが、すべての人が歯周炎になるわけではありません。歯周病が起こるには、その人の持っている免疫力、抵抗力に関係しています。通常の免疫力を持っていれば、高校生では免疫力が高いので、歯周病になりにくいです。遺伝的要素により高校生でも歯周病になる人もいますがここでは触れません。その免疫力は年と共に下がりはじめますので、50歳の人では、喫煙、糖尿などもかさなり歯周病になってしまう確率が高くなります。また歯周病菌は強い病原性を持つわけではありませんが、体の抵抗力が落ちると、全身疾患に影響を及ぼす可能性が2000年ころから推測されていました。現在、心内膜炎弁膜症糖尿病などとの関連が注目されています。

 ではその歯周病はいつ、どこから始まるんでしょうか?6歳、そう小学校1年生になると、体の内部にあった永久歯が、体の内部を守っている皮膚をやぶって外にでてきます。タケノコが地面から生えてくる感じでえすね。初めて出た外はばい菌だらけです。1ミリ立方のプラークの中には10億もの菌、そして口の中には500種類もの菌が存在しています。そのばい菌が、破って生えてきたところから逆方向に入ってしまったら大変なことになりますよね。しかし、神様はえらいです。破って生えてきたところには、接合上皮と呼ばれる、歯の表面にくっつくマジックテープを作ってくれました。。きれいにしていればここは剥がれません。しかし糸くずが付くとマジックテープははがれやすくなると同じように、歯周病菌により接合上皮が剥がれてしまいます。接合上皮が切れて傷ができている状態です。手を切って傷が開いたまま、ずっとそのままにしておきますか?病院へ行き、消毒して縫ってもらいますよね。または傷が浅ければそのままくっついて治ってしまいますよね。しかし、歯の表面から剥がれ傷になった接合上皮はそのままにしておいても治りません。歯周病菌が内部に入り放題です。

 菌が体の内部、つまり血管内に入り込んでしまうこと菌血症といいます。歯周病菌は酸素がないと喜ぶ嫌気性菌が主なので、体の内部に入ればますます好都合です。部屋のなかを見回すと汚れが集まりやすい場所があると思います。体の中でも細菌がたまりやすい所があります。心臓には内側に膜がありますが、ここに菌が付きやすいです。また心臓には4つの部屋がありますが、それぞれの部屋の間には血液が逆流しないように弁があります。ここにも菌が付きやすいです。そうして、それらの場所に炎症が生じると、心内膜炎弁膜症と呼ばれるようになります。心内膜炎の患者さんから歯周病菌が検出されています。そのため日本循環器学会では心内膜炎の治療には、歯科医師の協力が必要とガイドラインに加わりました。興味のある方は日本循環器学会のホームページhttp://www.j-circ.or.jp/を見て下さい。

 さらに肥満糖尿病とも関連していることにも少し触れておきましょう。炎症時には、TNF-alpha(腫瘍壊死因子)という体の中の炎症反応を活性化させるものが多く見られますが、肥満の人の内臓脂肪にはこのTNF-alpha(腫瘍壊死因子)が平常でもたくさん見られます。これは、内臓脂肪は中性脂肪としてエネルギーを蓄えるだけでなく、TNF-alphaを分泌する分泌細胞でもあるからです。ということは、肥満の人は平常であっても体内が炎症状態であるといえます。歯周病も炎症ですから、より悪化します。さらに歯周病菌は、菌の細胞膜自体に毒素を持っています。毒素は歯肉の炎症とともに、TNF-alphaなどの生理活性物質を介して骨を壊す作用もあります。この内毒素も血液中に入り込み、脂肪組織や肝臓からのTNF-alphaの産生を強力に推し進めます。TNF-alphaは、血糖値を下げるインシュリンの働きをも狂わせます。その結果、血糖値が下がりにくくなります。

 これからは、歯周病と聞いたら、「傷が開いている」、「心内膜炎」、「糖尿病」など、3つのキーワードを思い浮かべてみて下さい。

 最後に免疫力を日頃から高めておくことは大切だと思います.当院ではHK-LPと呼ばれるサプリメントを用意してあります。乳酸菌を加熱処理した武田製薬の「ラクデント」という製品です。腸管にあるパイエル板との接触により免疫活性が高まります。興味がありましたら、担当の先生、アシスタントに申し出て下さい。